普通に話される英語が聞き取れないのはなぜ?

「TOEICのリスニングは聞き取れるのに、ネイティブの話す本場英語はまるで別世界。」

そんな声をよく聞きます。
大学のCALL教材でも、自然なスピードで話す英語の教材を使うと学生たちは悪戦苦闘。

でも、スクリプトを見たらその後は聴きとれるといいます。
なぜこんなに違うのでしょう?
今回はその原因と、聞き取れるようになるための具体的な方法を紹介します。

理由1):テストの英語は“整いすぎている”

TOEICやTOEFLの音声は、発音が明瞭でスピードも一定。
単語と単語の間にしっかりとした「区切り」があります。

一方、実際の英語は――

単語がつながる(リンキング)
音が消える(リダクション)
強弱のリズムがある

例:

Did you eat yet? → Jeet yet?
I don’t know. → I dunno.
What do you want to do? → Waddaya wanna do?

つまり「単語が変化して聞こえる」ため、頭の中で“知っている単語”として認識できないのです。
テスト英語は「聞きやすく整えられた英語」。
本物の会話は、音の変化とスピードの連続なのです。

理由2):意味の先読みができない

テストでは設問や選択肢があるため、内容をある程度予測しながら聞くことができますよね。
しかし本場の会話には台本がありません。
「相手が何を言うか」を予測できない状態で聞くと、音を追うのに精一杯になり、意味の処理が追いつかなくなります。

では、対策のポイントは何でしょう?

スクリプトを見ながら「意味のかたまり(chunk)」で読む
ニュースやドラマで「次に来そうな内容」を予測しながら聞く

聞き取れない原因の多くは「音」ではなく「脳の処理スピード」。
耳だけでなく、理解のテンポを英語に合わせていくことが大切です。

理由3):ネイティブの“テンポと間”に慣れていない

日常英会話の速度は、テスト音声より20~30%速いといわれます。
しかも、感情によってトーンやリズムが絶えず変化します。

例:

A: “You serious?”(驚き+速く)
B: “Yeah, totally.”(軽く・短く)

このテンポの変化を“体で覚える”には、シャドーイング・オーバーラッピング・リピーティングが有効です。

☆おすすめの取り組み方:

同じ短文を繰り返し真似る(回数重視)
声に出して「英語のリズム」をつかむ
意味よりもテンポと音の流れを優先する

「同じ教材を3回」より「同じフレーズを10回」。
それが“耳の筋トレ”です。

さて、聞き取れる耳を育てる3ステップを紹介します。

(耳の筋トレ)

多くの人は「聞き取れない=自分の耳が悪い」と思いがちですが、実際には「音の変化に慣れていない」「英語を日本語に変換している」ことが原因です。
ここでは、リスニング力を確実に伸ばすための3ステップを紹介します。
短時間でも毎日続けることで、“聞き流し”とは違う確かな変化が生まれます。

Step 1:音の変化(Connected Speech)を「知識」から「感覚」にする。

英語では単語同士がくっついたり、音が消えたりして“別の音”になります。

例:

“want to” → “wanna”
“going to” → “gonna”
“Did you” → “Didja”
“next day” → “nexday”

まずはこうした現象を「頭で理解」よりも「耳で体感」することが大切です。。
YouTubeで “connected speech English” を検索して、短い動画で練習しましょう。
あと、洋楽を歌うのもいい練習になります。

☆やり方:

短い音声を選び、同じ文を5~10回繰り返す
聞こえた音を“そのまま自分の口で再現”する
自分の声でリズムをまねる

Step 2:シャドーイングで「音とリズム」を身体に刻む

音声を少し遅れて追いかけながら話す“シャドーイング”は、リスニング力を最速で鍛える練習です。

☆やり方:

スクリプト付きの短い音声(30秒~1分)を選ぶ
スクリプトを見ながら2回聞く
3回目以降は音を追いかけて発話(1~2語遅れでOK)
最後はスクリプトなしで、追いかける。
発音よりリズムを重視し、止まらずに続ける

効果はというと。。。

聞き取れない音が「聞こえる音」になる
会話テンポが自然に近づく
英語の拍(rhythm)感覚が身につく

Step 3:チャンク(意味のかたまり)で聞く習慣をつける

英語は「1語ずつ訳す」と追いつけません。
ネイティブは意味のかたまり=チャンクで理解しています。

例:

“I think / it’s going to rain / this afternoon.”
→ 「思う/雨が降るだろう/今日の午後」

☆練習法:

スクリプトを意味ごとに区切りながら音読
各チャンクごとにポーズを入れて読む
慣れたら音声を真似して同じリズムで発話

コツとしては。。
「聞いてから訳す」ではなく、「聞きながら理解」する。
これができるようになると、英語が“音のまま意味になる”瞬間が訪れます。

☆1日15分ルーティン

時間 内容
5分 “Connected speech”動画で音の変化を確認
5分  シャドーイング(同じ素材でOK)
5分  チャンク音読+復習

1日たった15分でも、1か月後には耳の質が変わります。
「スクリプトがなくても理解できる」瞬間を、必ず実感できます。

聞き取れない原因は「スピード」ではなく「慣れ」と「処理の仕方」

“音の変化”を知り、“リズム”を真似し、“意味のかたまり”で理解する
テスト英語から、リアルな“生きた英語”へ一歩進みましょう。

(おまけ)
英語ニュースの場合は、そのニュースの内容を日本語で調べてみて聞いてみると、信じられないほどクリアに聞けます。